〜カザフ族の壁掛け刺繍トゥスキーズ〜「未完成の完成品…?」

トゥスキーズ :

カザフ族の壁掛け刺繍、「トゥスキーズ。 」

遊牧民の移動式住居(ゲル/ユルト)を華やかに装飾するトゥスキーズは、カザフ族の美しい文化を代表する1つと言えるでしょう。

以前私が宿泊したモンゴルのゲルでも、中央奥の壁にひときわ人目を引く鮮やかなトゥスキーズが飾ってありました。

 

 

なんでも、遊牧民の社会では親密な親族関係や共同生活が基盤となっているため、親族・姻戚・友人が゙頻繁に訪問します。そのため多くの人が訪れるゲルは言わばその家の顔とも言えるのです。『トゥス・キーズ』は常にその顔であるゲルの中を華やかで美しく保つのに必要不可欠な存在だそうです。

刺繍・装飾を施すことは、カザフ族の女性の大事な役割で、家族の幸せや健康、繁栄の願いが込められたトゥス・キーズも、母から娘へと受け継がれた伝統的技法でひとつひとつ丁寧に作られています。

 

 

 

ほとんどのゲルの中は天窓以外には窓がなく、備え付けられている電気も小さめの豆電球のようなものなので、ゲル内は結構薄暗いのですが、鮮やかな壁掛け刺繍が室内をだいぶ明るく華やかな印象にしてくれている気がしますね。

 

Nomadic Soulのトゥスキーズ:

先日、Nomadic Soulでもヴィンテージのトゥスキーズ を3点入荷したのでご紹介。

どれも1970~80年頃に製作されたものと思われます。

 

①自由な配置の花文様壁掛け刺繍

カザフ刺繍の文様は羊の角などの文様が合わさって円形となっているものがよく知られていますが、こちらの壁掛け刺繍は花文様がメインとなっています。おそらく花文様が流行した1970年〜1980年代に製作されたものと思われます

商品説明はこちら

https://nomadicsoulcrafts.com/collections/vintage-kazakh-wall-hangings/products/vintage-kazakh-wall-hangings-001

 

②定番の長方形の門+角文様+菱形

 

大小2つの門が重なっているような長方形が合わさった定番のデザインで、角文様が合わさってできた円形文様や菱形文様がメイン。
たくさんの色の刺繍糸を使っている華やかなトゥスキーズ です。(こちらは既に売却済みです…)

商品説明はこちら

https://nomadicsoulcrafts.com/collections/vintage-kazakh-wall-hangings/products/vintage-kazakh-wall-hangings-002

 

③花文様+菱形

 花文様と菱形がメインのデザイン。よく見ると上側にはハート型のようにも見える文様も。所々蛍光色の糸も使われている可愛らしいトゥスキーズ。

商品確認はこちら

https://nomadicsoulcrafts.com/collections/vintage-kazakh-wall-hangings/products/vintage-kazakh-wall-hangings-003

 

 

布地が見えなくなるくらいに、布一面びっしりにひと針ひと針施されている刺繍は気が遠くなるほど細やかです。

複雑な模様で細かな刺繍を完成させるのはとても根気のいる作業で、1つの大きい壁掛け刺繍を早い人でも数ヶ月程の期間が必要だそうです。

トゥスキーズ の下側は一部刺繍されておらず、あえて一見未完成のようになっていることがあります。諸説ありますが、これは中途半端な部分を残すことで、「完璧なものは神様しか作ることができない」と言うイスラームの発想を表していると考えられています。

また、他の説では、子孫繁栄や永遠に続く愛を象徴するために下側をわざと閉じていないと言う人もいるそうです。

言うならば、トゥスキーズ は「未完成の完成品」なのですね。

物づくりにおいては常に完璧な完成品を求めがちな私たち日本人からすると、少し驚いてしまいますよね。

 

 

今回入荷したトゥスキーズ はかなりのヴィンテージ品のため、下地に多少の汚れや糸のほつれ等がみられますが、下地に施されている刺繍自体はかなり良い状態のままです。

本来はゲルの室内を装飾するために作られたトゥスキーズですが、もちろん日本の住居の壁にも飾ることができます。

リビングや寝室などの壁に飾るだけで、お部屋の印象がパッと明るく華やかになるのではないでしょうか。

ぜひ手にとって、トゥスキーズの精密な刺繍とハンドメイドの温かみ、そしてその歴史を感じていただけたらと思います。

ーNomadic Soul(ノマディック ソウル)