フェルトのキツネのおまじない

こんにちは、Nomadic Soulの與古田です。

以前のブログ記事で、モンゴルでは『可愛い子ほど、悪魔が連れ去ってしまう』という迷信から、わざと自分の子供に悪い名前を付けて大切な我が子を悪魔から守る、という変わった風習があるというお話をしました。

いろいろ調べてみると、モンゴルにはこの他にも子どもを守るための風習や面白い迷信があったので、皆さんにご紹介していこうと思います。

 

 

フェルトのキツネを吊るすモンゴルのおまじない

モンゴルでは、赤ちゃんが安眠できるおまじないとして、寝ている赤ちゃんの側にフェルトで作ったキツネの飾りを吊るす風習があります。

日本では、キツネと言ったら少しずる賢いイメージがありますよね。

実はモンゴルも日本と同じで、昔からキツネはずる賢くて悪戯好きな動物とされています。

では、なぜキツネを吊るすのでしょうか…?

 

このキツネの話には諸説ありますが、モンゴルではズル賢い悪いキツネが赤ちゃんの夢に出てきて「お母さんを連れて行っちゃうよ(死んでしまったよ)」と嘘をついて、赤ちゃんが泣くと「冗談だよ、お母さんはここにいるよ(死んでないよ)」と言ってお母さんを見せて赤ちゃんをからかう、という話があります。

この話が元になって、フェルトのキツネを赤ちゃんの側に飾ると、悪戯好きのキツネが夢の中で赤ちゃんに悪戯したり遊んでくれるため、夢の中で赤ちゃんは飽きることなく笑い、安眠できると考えられているそうです。

またはフェルトのキツネが赤ちゃんの側に吊されていると、本物の意地悪キツネではなく、代わりにフェルトのキツネが赤ちゃんの夢に出てきて、赤ちゃんと一緒に遊んでくれるため、赤ちゃんが泣かずに安眠できるとも言われています。

 この話から、モンゴルでは赤ちゃんが寝ている時に泣きそうになったり、笑ったりすることを、「キツネを見る」と言ったりするそうです。

この他にも、悪いキツネが赤ちゃんの夢の中に出てきて、赤ちゃんを連れ拐ったりして(殺してしまう)しまわないように、フェルトのキツネを飾ることもあります。

フェルトのキツネが夢の中で赤ちゃんと遊び、本物の悪いキツネが赤ちゃんの夢に入り込む隙を与えないようにして、赤ちゃんが悪いキツネに拐われずに(死の世界へ連れて行かれずに)現実の世界に残る、といった考えもあると言われています。

モンゴルは厳しい気候や乏しい衛生環境、伝染病などが原因で、長い間乳幼児の死亡率が高く、睡眠中に亡くなってしまう赤ちゃんが少なくなかったそうです。

そのため、愛する我が子が死神などの邪悪なものによって、あの世へ連れて行かれてしまうという考えがあったとか。

フェルトのキツネは「大切な赤ちゃんが寝ている間にも邪悪なものから守ってあげたい」という両親、家族の思いが詰まった大事なお守りの役割があるんですね。

 

ススを鼻に塗って黒ウサギ?!

モンゴルの遊牧民は、幼い我が子をむやみに外出させたり見知らぬ人に見せたりしません。特に暗い夜の間は、赤ちゃん〜3、4さいの子どもは極力外出させないようにします。

大切な赤ちゃんを外に連れていくと、悪魔などの邪悪なものに狙われて、連れて行かれることを恐れているためです。 

もしどうしても出なければいけないときは、指でススを取り、赤ちゃんのおでこから鼻にかけて一本の線を塗ります。

なんでもモンゴルの伝統的な言い伝えでは、邪悪な霊が子供を連れ拐おうと待ち構えていたが、それを知った両親が赤ちゃんの鼻筋にススを塗って外に出たところ、悪霊には赤ちゃんが草原に住む黒ウサギに見えたため、赤ちゃんは悪霊に連れ拐われずに助かったというお話があるそうです。

この話から、夜に赤ちゃんと外出する際には、赤ちゃんの鼻にススを塗って、赤ちゃんが邪悪なものから狙われるのを避けるとか。

もし草原で鼻が真っ黒な遊牧民の赤ちゃんや子どもを見ても、決してびっくりしないでくださいね 笑

まとめ:

モンゴルの赤ちゃんにまつわる風習、どうでしたか?

我が子を大切に思うモンゴル遊牧民の気持ちが感じられる、とても可愛らしい風習ではないでしょうか。

モンゴルでは近代化によって伝統的な習慣や文化が徐々になくなってきてしまっていますが、このように世代から世代へと語り継がれ、現代でもまだ残っている面白い風習もたくさんあります。

これからもNomadic Soulのブログでは、モンゴルをはじめとする世界中の様々な遊牧民独特の風習や神話などもご紹介していくので、お楽しみに!