遊牧民の暮らし
ここ数年、日本国内でもNomad(ノマド)という言葉を耳にすることが多くなったのではないでしょうか。
日本ではノマドと聞くと、定住地を持たずに自由気儘に転々と移住するライフスタイルや、またはノマドワーカーのように通常のオフィス勤務ではなく、カフェ等のネット環境が整った場所で働くフリーランスの人々やワークスタイルを思い浮かべると思います。
このようなノマド生活は、居住スタイルや働き方の自由度が高まりつつある日本の現代社会において、若い世代を中心に新しい暮らし方として受け入れられてきています。
しかしこのNomadという暮らし方は決して最近になって生まれたものではないのです。
もともとNomadとは英語で『遊牧民』を意味する言葉であり、東アジアや中央アジアなどの遊牧国家においては古くから続く伝統的な生活スタイルです。
ではこの遊牧民の人々とはどのような生活を送っているのでしょうか?
本記事では遊牧国家を代表とするモンゴルの遊牧民の衣・食:住について簡単にまとめていきたいと思います。
遊牧民とは?:
まず遊牧民とは、「一箇所に定住することなく、居住する場所を一年間を通じて何度か移動しながら主に牧畜を行って生活する人々」のことです。
よく遊牧民はあてどもなく移動していると思われがちですが、実は各家族ごとに夏営地、冬営地などの季節によって定期的に訪れる牧地があり、気候の変化や家畜の状況にあわせながら、ある程度決まったルートで羊や牛、馬等の家畜の群れを率いて移動しているのです。
遊牧生活では牧畜を主に行っているため、ミルク、毛皮、肉などを入手することは簡単ですが、穀類や、野菜、高度な工芸品を安定して手に入れることが非常に難しいです。
そのため、遊牧民はその移動する特性を生かして岩塩や毛皮、遠方の定住地から遊牧民の間を伝わって送られてきた品物などを運び、定住民と物品交換を行うことによって生活必需品を得ています。
一見素朴な自給自足生活を送っているような遊牧民も、実は馬や羊、牛などの商品性の高い家畜を売り買いして生活をな立たせています。
①遊牧民の衣
モンゴル遊牧民の伝統的衣装はデールと呼ばれるものであり、その特徴はモンゴルの風土や暮らしぶりと大きく関係しています。
写真のようにデールは立襟で裾と袖の長い衣服です。乗馬のときに足が開き、乗馬しやすいデザインになっていて、落馬した際に怪我をしないように、ボタン以外に金属類は一切使われていません。
特徴的な長い袖は乗馬の際にムチや手袋としても使用することができます。また、デールは立襟は隙間風を防ぎ、春の砂嵐からも首筋を守る効果があります。
このように、先人の知恵がたくさん詰まっていて、遊牧民にとっては普段着としても有能な伝統衣装デールですが、最近では若者を中心にカジュアルな洋服が取り入れられているため、最近では「普段着」としての役割がなくなりつつ、少しずつ「フォーマルな装い」として位置付けられるようになっているそうです。
冠婚葬祭などの特別なイベント、遠方からの旅人を迎え入れる・見送る際には、男女問わず必ずデールを着用しているようです。
正装として徐々に位置付けられつつもありますが、モンゴルの人々にとって現在でもデールは遊牧民の暮らしを象徴する特別な物であり、人々に古くから愛されているのです。
②遊牧民の食
モンゴルでは、人間は「赤い食べ物」と「白い食べ物」で生きていると古くから言われています。主に夏季は白い食べ物を指すチーズ、バター、ヨーグルト、馬乳酒、乳茶等の乳製品、冬季は赤色の食べ物を指す加工した干し肉等の肉類を食べています。
大陸性気候で雨が少なく乾燥したモンゴルの土地は基本的に野菜作りには向いておらず、市場に行けば野菜を買うこともできますが、値段も高く流通量も少ないです。
そのため、遊牧民は野菜をほとんど食べず、肉食中心の生活を送っています。人々は野菜から必要なビタミンやミネラル等の栄養素をとることが難しいため、代わりに乳製品から必要な栄養素を摂取することで健康を保っているのです。
③遊牧民の住
遊牧民族は季節によってもっとも遊牧に適した場所を探して、家畜とともに定期的に移動しながら生活するため、移動が容易にできるようにテント型の移動式型住居に住んでいます。この移動式型住居は国によってデザインや種類、呼び名が異なり、モンゴルではゲル、中国ではパオ、ウズベキスタンやカザフスタン 等の中央アジアではユルトなどと呼ばれています。
モンゴルのゲルの骨組みは簡単に分解して、いくつかに部材を分けて家畜やトラックに載せて運ぶことができ、大体1〜2時間で建てることができます。ほとんどの場合、ゲルの分解や組み立ては数家族の男性が総出で行います。
季節によって気温差が激しいモンゴルでは夏は40℃近くまで気温が上がり、冬は-30℃以下になることもめずらしくないため、モンゴルの伝統的移動式住居のゲルは、沢山の工夫が施されています。
ゲルの円錐形の骨組みには、羊の毛でつくったフェルトが覆い被さっていて、寒さが厳しい時期は、防寒対策として隙間風が入らないようにフェルトを二重にします。
ゲルの中央には暖炉も設置されているため、真冬でも室内を暖かく保つことができ、床には断熱材として乾燥した家畜の糞を敷き詰めてゲルを保温して底冷えを防ぎます。
また、夏の日中暑い時期は薄手のフェルトに変えたり、円形の天窓「トーノ」やフェルトの床部分をめくることによって簡単に風通しをよくして室内の温度を調整することが可能です。
最後に:
モンゴルの人々の暮らし、いかがでしたでしょうか?
本場のノマド生活はいわゆる日本のノマドとは違い、少々過酷ながらも伝統的で独特な魅力に溢れています。
弊社Nomadic Soulでは、そんなモンゴルをはじめとする遊牧国家の雑貨を直輸入、販売しています。
定住地を持たずにその時々の環境や状況に適した場所に移り住む遊牧民族の生きる知恵と高いデザイン性が詰まった商品を、今後の記事の中でご紹介していきたいと思います。