吉祥文様『ウルジーヘー』
突然ですが、皆さんはこの文様を見たことがありますか?
モンゴルに訪れたことのある方は、絶対に一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?
この文様はモンゴル語で「ウルジーヘー」と呼ばれ、大草原に佇むゲルや都心の街中の建物、お寺やお店、日常で使う家具や小物にまで…モンゴルの至る所に描かれています。
今回は、そんなモンゴルの伝統的な文様「ウルジーヘー」についてお話していこうと思います。
吉祥文様って?
このウルジーヘーは、モンゴルで使用されている「吉祥文様」の1つです。
吉祥文様とは、縁起がいいとされる動植物や物品などを描いた図柄のことをいって、良い兆し、めでたいしるしという意味を表現した文様の総称です。
特に中国文化圏を中心としたアジアで広く愛されていて、お祝い事や晴れ着などの調度品だけではなく、普段使いの品物にもよくあしらわれています。
例として、日本には円満や調和を表す吉祥文様の「花七宝」などがあります。 古くから着物や工芸品、今では折り紙の模様などに使用されていますよね。
吉祥文様は、その国や地域の文化や宗教などによってデザインが様々であり、込められている意味や願いも様々です。
ウルジーヘーの意味するものは?
では、モンゴルの文様、ウルジーヘーの文様は何を意味しているのでしょうか?
ウルジーヘーは、結び目を用いた文様であり、その一筆書きで描くことができる特徴から、連続する無限を意味しています。
愛、調和、繁栄、長寿、多幸が終わりなく永久に続いていくことをなどを願うシンボルと言われています。
ウルジーヘーが描かれている物を持っている人は、様々な幸運を授かることができると考えられていて、数ある文様の中でも最も人気があり、広く使用されています。
私が昨年モンゴルを訪れた際に宿泊したゲルや家具、街中の建物の扉や塀にも ウルジーヘーがたくさん使用されていました。
モンゴルの人たちは子供の頃からこのウルジーヘー含むその他の幸運を願う様々な文様に囲まれて、見守られて育ってきたのですね。
チベット仏教からの伝来
実はこのウルジーヘーは、もともとチベット仏教とともにモンゴルに普及したもので、ブータンやトゥヴァ共和国などのチベット仏教の影響を大きく受ける他の地方でも重要な文化的シンボルとされているそうです。
チベットではこの文様は無限結紐(ペルベウ/スワティカ)と呼ばれ、お寺や修道院、仏具などの仏教関連のものにもよく描かれています。
私がチベットで見かけた ウルジーヘー( 無限結紐)は、シンプルなものから、以下の画像のように、純粋/清らかさの象徴である蓮花などの絵柄が一緒に描かれていて、派手で複雑なデザインのものも目立ちました。
チベット仏教においては、 ウルジーヘーは「永遠の幸せ」の他にも以下のような解釈もあるそうです。
- 心の永遠の連続性
- 苦しみや誕生、死、再生の無限サイクル。
- 知恵と思いやりの絡み合い。
- 二元的世界における対立する力の相互作用および顕在化。この相互作用は、それを経て結合し、最終的には宇宙の調和につながる。
- 宗教教義と世俗的業務の相互依存。
- 知恵と方法の結合。
- 仏教の空と縁起。
- 祖先とユビキタスを結び付ける結び目の象徴。
- 始まりも終わりもないことから、釈迦の知恵の象徴。
…なんだかとっても壮大です。
こういったチベット仏教の概念の全てが、きっとモンゴル人が願う「永遠の幸福」へと結びついているのですね。
まとめ:
モンゴルにおけるチベット仏教の思想と永遠の幸せを願う思いが込められている文様「ウルジーヘー」
いかがでしたでしょうか?
とてもシンプルな模様ですが、神秘的な力強さと安らかさを同時に与えてくれる不思議な魅了がある文様だと感じました。
モンゴルには「ウルジーヘー」の他にも沢山の伝統的な文様やデザインがありますので、これからのNomadic Soulのブログでひとつひとつご紹介していきたいと思います!お楽しみに!