世界の遊牧民
こんにちは、Nomadic Soulの與古田です。
ほとんどの人は「遊牧民」という言葉聞くと、自然に「モンゴル」を思い浮かべるのではないでしょうか?
Nomadic Soulでも、これまでモンゴルの遊牧民を文化に関する話題を中心に取り扱ってきましたが、実は遊牧民が暮らすのはモンゴルだけではありません。
近代化が進み、多くの民族が遊牧生活を辞めて定住生活を送るようになった現代でも、世界の様々な地域で未だに細々と遊牧生活/半遊牧生活を送っている人々が存在するのです。
今回は、そんな世界の遊牧民の特徴を、地域や国ごとに皆さんにご紹介していこうと思います。
モンゴルの遊牧民
まずは、もはや遊牧民国家代表?の東アジアのモンゴルから。
皆さんご存知、モンゴルの遊牧民の移動手段は馬で、広大な大草原でゲル呼ばれるドーム型の移動式住居に住んでいます。
日本では誰もが子供の頃にモンゴルを舞台としたお話「スーホの白い馬」を読んだことがあるのではないのでしょうか。
日本では最も馴染みのある遊牧民の姿ですね。
他の地域の遊牧民と比べると、モンゴルの遊牧民は牧畜専業的であり、主に牛、馬、ラクダ、羊、ヤギの5種類の家畜と共に生きています。
遊牧民の家庭では、伝統的に男性が家畜も世話や遊牧を担当し、女性が乳搾りや家事に専念するパターンが多いようです。
昔ソ連の影響下にあったため、現在でも主にロシアのキリル文字を使用していて、年配層はロシア語を話す人も多いとのこと。
モンゴルの古来の宗教はシャーマニズムですが、現在では多くの人がチベット仏教を信仰しています。
中国 内モンゴルの遊牧民
「え?中国にもモンゴルがあるの?!」
と、意外に日本ではあまり知らない人も多いのではないのでしょうか。
内モンゴルは中国領土の北沿に位置しており、「特別自治区」とされています。
中国の統治下に置かれているため、内モンゴルでは中国語とモンゴル語の両方を話します。
また、内モンゴルには多くの漢民族も住んでおり、文化的な様々な面で中国文化の影響が見られます。
モンゴルの遊牧民と同じくドーム型の移動式住居に暮らしていますが、内モンゴルでは中国語で「パオ」と呼び、パーツやデザイン、住居内の装飾が若干異なっています。
近年では経済的発展が著しく、また草原の砂漠かも進んでいることから、遊牧生活から定住生活へと移っている人も多いそうです。
チベット高原の遊牧民
あまりイメージがないですが、チベット高原にも遊牧民が存在します。
チベットの遊牧民は夏と冬の年に2回移動します。
夏の間はヤクや羊などの家畜とともに移動して遊牧に行き、冬の間は土の煉瓦で作られた住居で暮らすような「半遊牧」の生活です。
彼らが夏の間に暮らす移動式住居は、モンゴルのドーム式住居と違って突き上げ式のテントで、テントの生地は通気性がよく丈夫な黒いヤクの毛から作られています。高地で生活するチベット族にとって、ヤクはまさに生きるための伴侶。衣食住の多くをヤクに依存しているため、とても重要な家畜だそうです。
熱心なチベット仏教信者の遊牧民も多く、信仰心は厚く、宗教が生活と密接に結びついています。冬の間は巡礼に行く者も多いとか。
中央アジアの遊牧民
中央アジアのカザフスタン 、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、アフガニスタンが含まれます。現在でも、テュルク系をはじめとする異なる民族が遊牧生活、移動生活を続けています。
テュルク系のカザフ人やウズベク人、キルギス人遊牧民は、「ユル」と呼ばれるドーム型の移動式住居に住んでいます。ユルトはモンゴルのゲルとほとんど同じ構造ですが、ゲルの屋根の骨組がまっすぐに対し、ユルトの屋根は少し湾曲しています。
一般的に彼らの多くはイスラム教を信仰しておりますが、イスラムが入ってくる以前の宗教的慣行であるシャーマニズム、アニミズム、トーテミズム、多神教、一神教、先祖崇拝などの信仰が現在でも残っていることとから、イスラム教の戒律や伝統が比較的に緩やかです。そのため、イスラム教で禁止されているお酒なども飲める環境にあるそうです。
中東の遊牧民
中東の山岳地帯や砂漠地帯にも、イラン系やアラブ系の遊牧民が点々と生活しています。
イラン系の遊牧民族としては、イランの最大の遊牧民族であるカシュガイ族や、イラク、シリア、トルコ、イランにはるか昔から生活していたクルド族などが挙げられます。主に羊やヤギを家畜として飼っている人々が多くます。
また、エジプト,イスラエル,イラク,シリア,ヨルダンのサハラ砂漠、西部砂漠やアラビア砂漠など、乾燥した砂漠地帯で遊牧生活を送るアラブ系遊牧民のベドウィン族などもいます。ベドウィン族は、ラクダや羊、ロバなどを主な家畜とし、年間を通して水や食糧を求めて、ラクダやロバを移動手段として各地を渡り歩いています。
中東の遊牧民はヤギなどの毛で作られた突き上げ式テントが特徴なキャンプ場に住み、牧畜の他に絨毯などの装飾品を作って生活を成り立たせている人々も多いです。
インドの遊牧民
インドの代表的な遊牧民族として、インド西方のタール砂漠でラクダを放牧して暮らすラバリ族がいます。
何世紀もの長い年月をかけて、ラバリ族はアラビアから中央アジアへと東進し、インド西部へと移動してきたそうです。
彼らのほとんどはヒンドゥーとイスラームの二つの宗派に分かれています。
ラクダの乳を利用し、かつ、ヒンドゥーの祭日にきまった聖地に大集合して大きな家畜市をもつなど、多くの点で特異であると言われています。
インドにはラバリ族の他にも、メグワル族などの少数遊牧民族も存在していて、インド系遊牧民の女性が施す刺繍は、種類が豊富で、その独特な美しさから芸術性が認められているそうです。
また、インドにはチャンパと呼ばれる、チベットからインド北部にかけて活動するチベット系遊牧民も暮らしています。
アフリカの遊牧民
大きく分けて、アフリカの遊牧民にはラクダ牧畜とウシ牧畜が見られます。
ラクダの遊牧はサハラなどの砂漠・乾燥地域で、牛の遊牧はサバナ地域で行われているそうです。
ベルベル人系の遊牧民であるトゥアレグ族をはじめとする、サハラ地域で暮らしているアフリカ遊牧民の間では、イスラーム化の度合いが高くなっていますが、東アフリカのサバナ地域で暮らすで遊牧民の間では、イスラーム文化は受け入れられていませんが、伝統的には1つの神を進行する、一神教が見られます。
私たちがメディアでよく目にする東アフリカに住むマサイ族も、近年では都市への定住化が目立ちますが、本来は遊牧民/半遊牧民です。
遊牧生活を送るマサイ族は基本的に、男性は家畜の放牧を担当し、家畜や村が猛獣に襲われた時には闘います。一方女性は、遊牧中の仮住まいを建てて、家事や子どもの世話や遊牧から帰った家畜の世話もします。
本来のマサイ族は遊牧こそが神から与えられた仕事という考えを持っているため、定住化や観光業の仕事を斡旋されても、断るマサイ族もいるそうです。
北欧ラップランドの遊牧民
サーミ族は、北欧の三国(ノルウェー、スウェーデン、フィンランド)とロシアに住んでいる、独自の豊かな文化を築き上げてきた欧州唯一の先住民です。
彼らは独自の言語であるサーミ語の他、スウェーデン語、フィンランド語、ロシア語、ノルウェー語を話します。また近年では英語も話せる人も多くいます。
サーミ族の約3分の1は、移動生活/遊牧生活を送っており、主に狩人や遊牧をおこないながら生活しています。
トナカイやバッファローなどの動物の毛皮や布で覆われた円錐型テントに住み、夏の時期は海岸部へ、冬には内陸部へ、と季節の移り変わりと共に移動しながら、厳しい極寒の地で生き抜いてきました。
トナカイ遊牧は、サーミのアイデンティティを形成してきましたが、近代化と多様化が進みサーミが様々な職につくようになった現代では、トナカイ牧畜に従事するサーミは⒑%未満と言われています。
トナカイ遊牧を続けている遊牧民も、現在ではGPSやヘリコプターなどの現代技術を活用しているそうです。
まとめ:
世界の様々な遊牧民族、いかがでしたか?
古代から、世界中のあらゆる地域で人間は遊牧生活/移住生活を送ってきました。異なる血統の遊牧民族が国境を股にかけて移動してきたため、その過程で多くの民族や文化が入り混じり、現在の形となりました。
遊牧民族が暮らすどの国や地域も、現在は農耕牧畜や他の職業について都市部で定住生活を送るものも多く、生粋の遊牧生活を送るものは年々少なくなってきているそうです。しかし、そんな環境の中でも、民族の誇りを持って伝統的な遊牧生活を続けている人々も確かに存在します。
Nomadic Soulではそんな世界中の遊牧民によって作られた雑貨や、また、彼らの独特の文化からデザインのヒントを得て作られた雑貨を取り扱っていきます。
一箇所に根を張らずに、その時々の環境や状況に合わせて移動する遊牧民族の独特な生き方や、それぞれの遊牧民族のマインドとストーリーを私たちが取り扱う遊牧民雑貨を通して、皆さんにお伝えできたらと思っています。