世界の遊牧民テント

現在でも世界の様々な国と地域で、異なる種族の遊牧民がそれぞれの伝統的な生活を送っています。

彼らが住んでいる移動式住居/テントも、彼らの種族や住む地域によって多種多様であり、その形状と組み立て方法から主に3種類に分けられると言われています。

今回のNomadic Soulのブログ記事では、そんな遊牧民テントの種類をご紹介していこうと思います!


1.突き上げ式テント

突き上げ式テントは、主にアラブやイラン、アフリカ、チベットの一部地域に住む遊牧民によって使用されています。

一般に、複数の木材の柱が布製の屋根部分を突き上げ支えているような構造で、壁はスダレのような編み枝細工でできています。テントの側面には壁がなく、オープンに開けている部分があることも多いです。

 

 

ほとんどの場合、屋根には黒い山羊やヤクの毛で編んだ毛布が使用されています。こうした布は遮光性と通気性に優れていて、強い日差しや雨も通さないつくりなので、厳しい砂漠地帯や平原の気候にも適しているそうです。

また、テントの床にはキリムやキャッベなどの絨毯が一面に敷かれているため、硬い地面の上でも快適に暮らせるといいます。


2.円錐型テント

円錐型テントは、北欧/ラップランドのトナカイ遊牧民サーミ族や、アメリカのネイティブアメリカンなどの狩猟採集民によって、持ち運びのできる避難小屋として使用されていました。

写真のように、先端上部を束るような形で支柱が建てられており、その支柱の周囲がトナカイやバッファローなどの動物の毛皮や布で覆われています。小さいものでは1~2人、大きいものでは数世帯が住むことができる程の、巨大な物もあるそうです。

 

 

円錐型のテントは底面が広く、先端上部が枝分かれした木の柱で頑丈に支えられているため、強風にも耐えられます。また、シンプルな構造で必要な建材も多くないため、持ち運びも組み立ても簡単です。

天井の開いている部分が排気口の役割をしてくれるので、テントの中で火をくべて暖房ストーブやや煮炊きをすることも可能です。床には小枝や動物の皮などの敷物が敷き詰められていることもあります。

 

3.ドーム形テント

 モンゴルではゲル、中国ではパオ、カザフスタン やキルギスなどの中央アジアでは、ユルトなどと呼ばれ、今現在も多くの遊牧民に使用されています。

ドーム型なので、他のタイプのテントとは違い屋根と壁面の両方に骨組みがある非常に安定した作りです。

ゲルの骨組みには羊の毛でつくったフェルトが覆い被さっていて、寒さが厳しい時期は、防寒対策として隙間風が入らないようにフェルトを二重にするそうです。


ゲルの中央には暖炉も設置されているため、真冬でも室内を暖かく保つことができ、床には断熱材として乾燥した家畜の糞を敷き詰めて、ゲルを保温し底冷えを防ぐといいます。

また、夏の日中暑い時期は薄手のフェルトに変えたり、円形の天窓「トーノ」やフェルトの床部分をめくることによって簡単に風通しを良くして温度を調整することが可能です。


まとめ:

いかがでしたか?

同じ「遊牧民」でも、それぞれの種族の文化や地域の気候によって住居テントのデザインや機能が様々でおもしろいですよね。

どのテントも、定住地を持たずにその時々の環境に適した場所に移り住む遊牧民族の生きる知恵が詰まっています。

Nomadic Soulのブログでは、この他にも様々な世界の遊牧民族の独自の暮らし方や風習、またそれぞれの文化が反映された美しいデザインやアートについてもご紹介していきますので、是非チェックしてください!